第32章 裏切り者達
私がそう返事をすると、彼はホッとしたように笑顔を見せた。…身体は大きいけれど、まだ幼さの残る笑顔だった。それを見てズキンと胸が痛む。
(この子も…まだ子どもじゃないか…。エレンと同じで…子どもから大人になろうとしている少年だ。ライナーだって、随分貫禄はあるけれど、きっとまだまだ中身は子どもだろう…)
そんな子どもに疑いの目を向けることに、罪悪感を持たない訳がない。
だけど…あのアニだってまだ子どもだった。でも彼女は、たくさんの人間を殺した。
(大人とか子どもとか…そんな事にとらわれてちゃいけない…。彼らのやった事をちゃんと見極めなくちゃ…)
本当に彼らがアニの共謀者だと言うのなら…決して気を緩めてはいけないんだ。
「みんないるかい?…ユミルの件は後回しだ。壁の修復作戦を再開しよう」
クリスタと話していたハンジ分隊長がやって来た。今後の行動について指示を出すため、皆の事を呼ぶ。
だが、分隊長が話し始めようとしたその矢先に、壁の下に駐屯兵団の先遣隊が姿を現したのだった。