第32章 裏切り者達
「怪我は無い?」
怪我の有無を確認するフリをして、私はベルトルトの顔や姿をまじまじと見つめた。
ライナーは筋骨粒々といった体格をしているが、彼の方はそれに比べるとやや細身だ。だが身長は高いし、十分良い体格をしている。この二人はミカサに次ぐ順位で訓練兵を卒業しているそうなので、身体能力は相当高いのだろう。
「大丈夫です。あの…ラウラさんですよね?」
唐突に問われて、私は心臓が口から飛び出しそうになった。なぜ彼が私の事を知っている…?
「そうだけど、ゴメン会ったことあったっけ?」
彼の事をこっそり観察していたため、必要以上にビックリしてしまった。何か不審に思われてしまったのだろうか?
努めて平静を装いながら返事を返すと、ベルトルトはシュンと眉を下げて謝ってきた。
「あっ、突然申し訳ありません。よく絵を拝見していたのでつい…」
「そ、そうだったんだ。ありがとう」
何かに感づかれた訳ではない事が分かり、私はひとまず安心した。そうか…私の絵を見てくれてたのか。報告書にも使われているし、確かに目にする機会は多いかもしれない。それに、彼らが訓練兵時代に使っていた教本にも私の絵は載っているしな。