第32章 裏切り者達
報告書を提出し終わり、ひとまずは自分の役割を全うしたので、私はエレンのもとへと向かった。リヴァイ兵長が不在の今、エレンの見守り役は私だからだ。兵長からもそのように指示されている。
エレンは壁を登る兵士達の支援をしており、私が行った時にはちょうど、片腕を怪我した大柄な男性兵士に手を貸しているところだった。
「ライナー、掴まれ」
「おう」
ガシッと手がつながれるのを見ながら、あれがライナーか、と思って胸がざわざわと波立った。だけど努めて普通に振舞わなければならない。こちらの疑いを決して悟られてはいけないのだ。
次々と兵士達が壁を登ってくる。その中に一人、立体機動装置を付けていない兵士がいた。
ヒゲゴーグルさんの立体機動装置で引き上げてもらっている彼に、私は手を差し出した。
「掴まって」
「あ、ありがとうございます」
ガシッと握り返されたその手は大きく、私の手などすっぽりと収まってしまいそうだった。
壁に這い上がり目の前に立った彼はとても背が高くて、ミケ分隊長やエルヴィン団長くらいあるのではないかと思われた。
この場で立体機動装置を付けていないのは、隔離されていた104期生だけだ。コニーとクリスタはすでに壁上に退避している。ライナーもたった今引き上げた。とすると残る一人、この子がベルトルトか。