第32章 裏切り者達
ひとまず私達は壁上へと退避することになった。地上にいては、いつまた巨人に襲撃されるか分からないからだ。死亡したナナバさん達の遺体を探す作業は後回しだ…。
壁を登ると、私はすぐさまハンジ分隊長に報告書を提出した。コニーとクリスタからの話だけでも十分に概要が把握できたからだ。今は少しでも早く報告する事の方が重要だ。
報告書には、104期生が隔離されていた施設が突如現れた巨人達に襲撃されたことから、近隣の村に知らせて回ったこと、ウトガルド城での戦闘についてなど…現在に至るまでの経緯がまとめてある。
そして文章の他に、私は三枚の絵を描いていた。コニーが自分の村で見たという母親に似た巨人と、ウトガルド城めがけて投石してきた獣のような巨人、そしてユミルが巨人化した姿。まだコニーとクリスタから聞いただけだから、どれだけ実物に似せられているかは分からない。
「ありがとう、君がいてくれて助かる」
私の報告書を読みながら、ハンジ分隊長が言ってくれた。
「この三枚の絵も、非常に興味深いよ。だけど、今は壁の修復作戦が第一だ。まずは穴の位置を特定しなくてはね…」
そう言って分隊長は報告書を胸ポケットにしまうと、指示を出すために歩いていった。