第32章 裏切り者達
さすが、調査兵団の戦闘力は凄まじい。あっという間に巨人たちの討伐は終了し、生き残っていた104期達は全員無事に保護されたのだった。ただ…その内の一人は、エレン同様に巨人になれる子だった訳だが。
ハンジ分隊長の指揮により、兵士達は手分けして負傷者の手当てや近辺の警戒にあたった。
私は104期生達から経緯を聞き取り、報告書を作成する担当になったので、まずはコニーから話を聞いていた。だが、彼の話の中で私は信じられない報告を聞いたのだった。
(なん…だって…?)
今回の戦闘でナナバさんやゲルガーさんが死亡したというのだ。
思わず、文字を書いていた手が止まる。
「ナナバさんとゲルガーさんは最後まで俺達を守るために戦ってくれました。でも…二人共刃とガスが切れて…最後は巨人共に…ううっ」
話しながらコニーが涙を流し始めた。形の良い坊主頭が小刻みに震えていて、小柄な体格と相まってまるで子どもが泣いているように見えた。
「そう…か…コニー、よく生き残ってくれた」
彼の震える背中をさすりながら、不思議と私はぼんやりしていた。ナナバさんとゲルガーさんが死んだ…?あの二人は歴戦の兵士だ。今までにだって数多くの修羅場をくぐり抜けて来たはず。それがよりによってこんな壁内で…巨人に食われただって?
その後クリスタにも話を聞きながら、私はどこかぼんやりとしていた。二人が亡くなったと聞いても、何というか…まったく実感がわかないのだ。だから涙も出てこない。