第32章 裏切り者達
それは、信じられないような光景だった。
空高くそびえ立ったウトガルド城の塔が傾き始めて、まるでスローモーションのようにゆっくりと倒れていったのだ。
白い煙が辺りに大きく舞い上がり、倒壊の激しさを物語っている。
それとほぼ同時に、陽が完全に昇った。倒壊したウトガルド城の全容が朝日に照らし出されて、私達はしばし言葉を失ったのだった。
煙が晴れてくるにつれて、塔周辺の様子が見えてきた。私は目を凝らしてそれを見つめていたが、舞い上がる煙の中で何かが激しく動き回っていることに気がついた。
「あっ!!ハンジ分隊長っ、巨人ですっ!巨人が複数体いますっ!!」
思わず叫ぶと、分隊長は前を見据えて腕を振り上げた。
「総員戦闘開始っ!ウトガルド城周辺の巨人を討伐せよっ!!」
「はっ!!」
私たちは一斉に立体機動に移ると、崩れた塔に群がる巨人達の討伐に飛び立ったのだった。