第32章 裏切り者達
私達は松明を灯しながら馬を走らせた。エレンはまだ顔色が悪かったけれど、何とか馬に乗れるくらいまで体力が回復したようだった。
馬で駆ける彼に寄り添うようにしてミカサとアルミンが並走し、エレンの様子を見守っていた。
二人の献身的な姿に、3人が幼馴染みであることを思い出す。超大型巨人から何とか逃げ延びて、それからは過酷な環境の中で身を寄せ合って生きてきたのだ。もはや家族以上の存在なのだろう。
そんなエレン達の姿を見ていると幼なじみのライデンのことを思い出してしまうから、私はちょっと切なくなって視線を外した。
今夜は雲が多くて時折月明かりが差すこともあったけれど、ほとんどの時間は真っ暗闇だった。そんな状況下で馬を全力で駆けさせることなどできないので、徐行せざるを得ないのだった。
もどかしい思いを抱えながらどれくらいの時間走ったのだろうか。空がうっすらと白んできて周囲の景色が見えてきた時、数百メートル先に高い塔が建っているのが見えた。
「ウトガルド城だ!!」
ハンジ分隊長が指をさして声を上げる。 だが、それに続いて発せられたのは、驚愕の声だった。
「ん?!えっ…ちょっと待って…!あぁっ、崩れるっ」