第32章 裏切り者達
「ライナーとベルトルト?」
それは初めて聞く名前だった。彼らは現在、南方の施設で隔離されている104期の兵士らしい。その二人に…アニとの共謀の疑いがかけられたと言うのだ。
これから向かう先に恐らく彼らはいる。彼らの事を兵団が疑っていることは、ここにいる兵士全員が知らされている。だが、疑っていることを決して気取られてはならない。努めて普段通りに振る舞うようにと、そういう指示なのだった。
ハンジ分隊長の話を受けて、同期であるエレン達は困惑を隠せない様子だった。
「その疑いは…低いと思います。ライナーはオレ達の兄貴みたいな奴で…人を騙せるほど器用じゃありませんし…」
そう言うエレンの不安そうな表情を見て私もまた、これがただの杞憂である事を願ったのだった。