第32章 裏切り者達
兵長が撫でた頬の辺りに手を当ててみると、いつの間にか頬にガーゼが貼られていた。
「あれ?!これ、いつから付いてたんだろ!?」
この位置は、確か女型巨人の放った瓦礫が当たって切れてしまったところだ。だけど、怪我の手当てなんて一体いつ受けたっけ?全く記憶にない…。
「なんだい、気付かなかったのかい?出発する前からずっと貼ってあったよソレ」
「え…」
何だかよく分からなくなって、私は首を何度もひねった。それを見てハンジ分隊長は、またニヤニヤと笑っていたのだった。
エルミハ区に到着して30分もしない内に私達は出発した。目指すはウォール・ローゼ南方にある、ウトガルド城だ。隔離されている104期の子達や、監視任務についているナナバさんやゲルガーさんに一刻も早く合流しないといけない。
ウトガルド城を行き先に決定したのはハンジ分隊長だ。きっと高さのある建物だろうし、壁にも近いから彼らを見つけやすいだろうからと。
出発直前、今回の作戦に参加する兵士が一同に集められ、指揮官であるハンジ分隊長からある指示をされた。