第32章 裏切り者達
「そういう事だ。お前は自分が思っているよりも、絵を描いている時は無防備なんだ。分かったら気をつけろ」
「はい!」
私が頷くと兵長も小さく頷いて、私の頬をスリと軽く撫でたのだった。
兵長は時々こうやってさりげなくボディータッチをしてくる。私もエレンについついやってしまうから、多分そんな感じなんだろうとは分かっているけれど、それでもやっぱり好きな人に触れられれば嬉しい。
エルミハ区に到着し荷馬車を降りると、先発していた兵達が迎え入れてくれ、出発準備の進捗状況を教えてくれた。
急いで立体機動装備を装着していると、隣で同じように装備の準備をしていたハンジ分隊長が、手は止めずに話しかけてきた。
「いやぁ~、しかし最近のリヴァイはもう隠さなくなってきたねぇ。見てるこっちが恥ずかしくなるよ」
「え?」
唐突に言われた言葉に、私は思わずきょとんとしてしまった。
「ハンジ分隊長、隠さないって何をですか?」
「ん?ん~、こっちはこっちで手ごわいなぁ~。まぁ、その内分かるよ、その内ね!グフフ」
「??」
ニヤニヤしながら立体機動装置の装着を進めるハンジ分隊長に、私は話の筋が読めずに首を傾げた。…何かこの表情は、昔どこかで見覚えがあるような気がする。でもなぁ、分隊長はよくこんな感じで顔が緩んでいるから…よく分からないな。