第32章 裏切り者達
(あぁ、それにしても…)
私はすぐ後ろにいるエレンの事を思う。
(私たちはまた…この少年に重い荷物を背負わせようとしているのか…)
エレンにばかり頼らざるを得ない現状がもどかしくて、可哀想で、何とかしてあげたい。彼にばかり負担をかけたくない。
だけど…それでも私達はエレンを頼るしかない。それがどうしようもなく申し訳ない気持ちにさせるのだった。
戦闘に参加できない兵長が同行できるのはエルミハ区までで、この街にとどまりニック司祭の監視を続けるという。
エルミハ区に到着する直前、兵長はそれぞれに声をかけてくれた。アルミンやミカサだけでなく私にも。
「お前の絵は何よりも役に立つ。だがな、だからといって我を忘れるほど集中するんじゃねぇぞ。今回は俺が一緒にいねぇんだ。巨人に見とれて、頭をかじり取られるなよ?」
「はいっ!でも、最近は随分制御できるようになってきたと感じます。絵を描いていても、ちゃんと自制できます」
「…お前、さっき地下でアニ・レオンハートの絵を描いている時、俺が話しかけたことに気付いたか?」
ジロリと兵長に睨まれて、私は一瞬固まって、タラリと冷や汗を流した。え…兵長何か仰っていたっけ?ずっと黙って彼女を睨みつけていたんじゃ…。