第32章 裏切り者達
だがそんな私達を尻目に、アルミンだけは目を見開いて驚きの声を上げた。
「え…え!?消えてない!?」
「そう!アニが巨人化を解いて体から切り離されてもこの通り!蒸発もしない…消えてないんだ」
それを聞いて、あっ、と思った。そこまで言われてやっと私は、分隊長とアルミンが驚いている理由を理解したのだった。
それにしても…アルミンはなんて勘の良い子なのだろう。瞬時にあそこまで頭を巡らせることができるなんて。
「もしかしたら…と思ってね」
と、ハンジ分隊長が説明し始めた。その皮膚片と壁を見比べた結果、模様の配列や構造がよく似ていたらしい。
「つまりあの壁は大型巨人が主柱になっていて、その表層は硬化した皮膚で形成されていたんだ」
「!」
エレン達が息を飲むのが分かった。
なるほど、先ほどあの状況の中でも確認しておきたかったものとは、それだったのか。先ほどの出発時のハンジ分隊長が一心に顕微鏡を覗き込んでいた事を思い出して私は思った。
私じゃぜったいに「もしかしたら」でそんな事思い浮かばない。その発想力には本当に驚かされる。やっぱりハンジ分隊長は凄い人だ。