第32章 裏切り者達
私達は今、エルミハ区に向けて馬を走らせている。私は荷馬車を操縦し、その荷台にはハンジ分隊長を初めとしてリヴァイ兵長、エレン、ミカサ、アルミン…そしてウォール教のニック司祭が乗っていた。ハンジ分隊長が彼の事を連れてきた時には一体なぜと驚いたが、どうやら彼自身が同行することを希望したらしい。
馬の操縦をしながら背後で交わされる会話に聞き耳を立てた。壁の中に巨人がいる秘密をウォール教が知っていたことは、私は先ほどエルヴィン団長達の打ち合わせの中で聞いていた。
だが、今初めてその事実を知らされたエレン達の驚きは、当然のことながら大きかった。
「はぁ!?何だそりゃ!!」
エレンが大声を上げ立ち上がったのが分かる。ガタンと荷馬車が揺れた。その気持ちはよく分かる。私だって初めて聞いた時はそう思ったから。
「おとなしくして…まだ巨人化の後遺症が…」
勢い良く動いてめまいを起こしたエレンの身体をミカサが支え、ハンジ分隊長は話を続けた。
ウォール教は壁の秘密を知っているが、それは明かせないというのだ。しかしながら、ウォール・ローゼが突破されたかもしれないこの状況においては、どうもその限りではないらしい。
ニック司祭は、自分の目で現状を見て、その上で原則に従って黙秘し続けるか話すのかを決めたいと言うのだ。