第32章 裏切り者達
部屋に着くと、ハンジ班の先輩方は資料などを抱えて慌ただしく走り回っていた。だがそんな中でハンジ分隊長だけは机に向かっていて、何かを一心に顕微鏡で観察していた。
「やっぱり…似ている!!」
分隊長の手元には、瓦礫の破片と、変わった形の石が置かれている。
「分隊長!急いでくださいっ」
荷物をたくさん抱えたモブリット副長がほとんど叫ぶようにして声を上げていた。
そんな副長は私の姿に気付くと、少しホッとしたような表情を浮かべた。
「ラウラ!良かった、呼びに行こうと思っていたんだ。見ての通りだ、すぐに出発する。準備にかかってくれ」
「はいっ!」
私は敬礼して返事をすると、準備を進める先輩方のもとへと走ったのだった。
〇
早馬で報告してくれたトーマさんの話では、ウォール・ローゼ南区の施設で待機中に、突如として巨人が複数体出現したとのことだった。
アニ・レオンハートの共謀者が紛れている可能性を考え104期生を隔離している最中の出来事だった。
トーマさんは直接巨人の姿を見た訳ではないらしいが、ミケ分隊長が嗅ぎ付けたというから、確実な情報だろう。