第32章 裏切り者達
その時、ベッドで寝ていたエレンがモゾと身じろぎをした。
「う…ミカサ…、ラウラさん…?」
「?!エレンッ、目が覚めたの?!」
エレンがゆっくりと上体を起こそうとしていて、ミカサが慌ててその身体を支えた。
「エレンッ、無理しないでまだ横になっていて」
「大丈夫だ」
ミカサの手を払い除けてエレンが言うが、その手つきは弱々しく、顔色も良くない。まだまだ体力は回復していない様子だった。
だがなにはともあれ、ひとまずは大丈夫そうで安心した。
「エレン、お疲れ様。よく頑張ったね」
ついいつもの癖でポンとエレンの頭を軽く撫でると、エレンはちょっと照れたような顔をして俯いた。少し乱れた固めの髪を、整えるようにして何度か撫でる。それをじっと見つめていたミカサが言った。
「エレンは…ラウラさんの前でだけは大人しい」
「はっ、はぁっ?!何言ってんだミカサ!それじゃまるで俺がいつも暴れてるみたいじゃねぇか!」
「今だってそう」
「…っ!あー、もう!」
「私もエレンの頭を撫でたい。撫でてもいいだろうか?」
「ダメに決まってんだろっ」
「なぜ?どうしてラウラさんは良くて、私はダメなの?」
「ダメなモンはダメなんだ!って、そんなこと話してる場合じゃねぇだろ。アニは…あいつはあの後どうなったんだよ?」