第32章 裏切り者達
一方のミカサは、私の顔をじっと見ていたが不意に視線を落として、おずおずとした口調になった。
「あの…リヴァイ兵士長のお怪我の具合は…その後いかがですか?」
ミカサは、私が兵長の足の手当てをしていることを知っているのだ。先日古城に来た時にそんな話をしたから。そう言えばあの時も、ミカサに聞かれたんだった。
「まだ数日しか経っていないけど、腫れはほとんど引いたよ。やっぱり人類最強は回復力もすごいのかもね」
「そうですか…」
少しホッとした表情のミカサに、私は先日の壁外調査の報告書の内容を思い出す。兵長の足の怪我は、ミカサを庇うために負ったものだと書かれていた。
「私のせいで兵団の主力を失ってしまった…ので、私が戦闘で頑張るのは当たり前、です」
ミカサが気にしているのは、そういう理由だったのか。だからやけに聞いてきたんだな…。
「ミカサは兵長のいない穴を十分に埋めてくれたよ。それに、上官が部下を守るのは当たり前だよ。兵長ならきっとそう言うと思う」
ミカサは少し困った様な顔をした。
「そうでしょうか…?」
「そうだよ。兵長は見かけよりもずっと優しい人なんだよ。ちょっと分かりにくいけどね」
ニコリと笑いかけると、つられてミカサも少し笑ったのだった。