第32章 裏切り者達
「ミカサは怪我してない?」
私の問いかけにミカサはこっくりと頷く。
「ミカサは凄いね。ミカサの働きのおかげでアニを捕まえることができたんだよ。私なんて、一太刀も浴びせられないまま何の役にも立たなかったよ」
そう言って私は自嘲気味に笑った。それをミカサはじっと見ていたが、静かに話し始めた。
「そんな事ない、と思います。ラウラさんには絵があります。その絵があるから、私達の戦いを伝えられる。何の役にも立っていないなんてことは、ないと思います」
「…ありがとう」
じっと、澄んだ黒い目で見つめられて、私は思わず下を向く。
何てことだ。つい一ヶ月ほど前に入団したばかりの新兵の前で弱音を吐いて、挙句慰められてしまうなんて。何でこんなこと言っちゃったんだろ…先輩として情けない…。私はこっそりと反省した。