第32章 裏切り者達
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アニ・レオンハートのスケッチを終えて私と兵長が地上に戻ると、陽はほとんど暮れかけていた。
すぐに会議で使用するので短時間で描いたつもりだったが、それでも30分くらいはかかってしまったようだ。
スケッチした絵を提出しに行こうと歩いていると、資材を抱えながら慌ただしく走っていく仲間と何人もすれ違った。壁の巨人を埋めるための作業をしているのだろう。早く私もハンジ分隊長から仕事の指示をもらわなければ。
隣を歩く兵長も、慌ただしく立ち働いている仲間の姿を見て小さく舌打ちしている。
「チッ…情けねぇ」
きっと、負傷して任務に参加できない自分がもどかしくて仕方がないのだろう。
私達が部屋を訪れると、そこにはエルヴィン団長とハンジ分隊長、その他にも上官達が机を囲み、この後に行われる会議のための打ち合わせを行っていた。
「リヴァイ、ラウラ。丁度いい、今始まったところだ」
何枚もの資料を手に持ったエルヴィン団長が、顔を上げて声をかけてくれる。
私はつい先ほど描き上げた絵をさっそく団長に提出した。団長はそれを見て、小さく頷く。
「助かる。これで報告が格段にやりやすくなるだろう」
そう言って団長が絵をテーブルの中央に置くと、皆が肩を寄せ合って覗き込んだ。
「相変わらず凄ぇな、ラウラの絵は」
私が描いたのは、女型巨人とエレン巨人が格闘している姿と、女型巨人のうなじを剥がした時の様子、結晶体に包まれたアニの姿、…そして崩れた壁から顔を覗かせた巨人の姿だった。