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【進撃の巨人/リヴァイ】君が描くその先に

第32章  裏切り者達


 ひとまず運搬の作業が終わり、見張りの兵を残して他の兵士は地上に戻っていった。
 私は彼女の目の前に陣取り、松明の明かりを頼りにスケッチを始めた。私の横には腕組みをした兵長が立っている。その表情は険しく、彼女を見る目はまるで氷のように冷たかった。

 地下牢には静寂が流れ、私が鉛筆を紙に滑らせる音だけが響いていたが、少し経った頃に唐突に兵長が話し始めた。

「…コイツは、巨大樹の森で戦闘した時に泣いていた」

 私は鉛筆を止めて兵長の顔を見上げた。兵長が言っているのはきっと、エレンを奪還した時のことだろう。

「そう言えば、先ほどうなじを切り裂いた時にも彼女は泣いていました。まるで…悲しいみたいな表情をして」

 私は先ほどの光景を思い出す。アルミン達の言っていた通り、アニ・レオンハートは確かに美人だった。そんな彼女の泣き顔は美しく、あまりにも静かに涙を流すその姿に、実はほんの少しだけ可哀想に思ってしまった。
 だけど、彼女は多くの仲間を殺した仇だ。同情心など無用であることは分かっている。

 もう一度チラリと兵長を見ると、いつもと同じ無表情だったけれど、どこか遠い目をされていた。

「そうか…悲しいのは、こっちの方だってのにな」

 寂しげに言われた言葉に、私はリヴァイ班の皆やヘルゲやミア、今回の戦闘で亡くなった兵士達の事を思ったのだった。

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