第32章 裏切り者達
「何…あれ…」
ドクッドクッと心臓が大きく脈打ち始める。
「壁の中に…巨人がいる…?」
あの顔の大きさから考えても、相当大きな巨人であると推測される。
亀裂の間から覗く大きな瞳は、ぼんやりとして虚ろだったが、徐々に光を取り戻してきているように見えた。
気のせいで無ければ…、ググッと少しずつ瞳が動いている。そう、まさに真横にいるミカサを見ようとして…。
ハンジ分隊長は、壁を見上げながらブツブツと何かをつぶやいていた。
「何あれ?あの巨人はたまたまあそこにいたの?それとも壁の中には巨人がぎっしり?」
壁に巨人が隙間もないほど詰まっている様子を思わず想像してしまい、ゾッとした。恐すぎる…。
私達が言葉を失ってその場に立ち尽くしていると、後ろからぬっと手が出てきて、ハンジ分隊長の肩を掴んだ。
「はぁっ、はあっ…あの巨人に…日光を…当てるな…」
息を切らして今にも倒れそうになっているニック司祭が、絞り出すようにして言ったのだった。