第32章 裏切り者達
そんな矢先だった。向こうの空に雷が落ちたような閃光が走るのが見えて、少し間を置いて大きな爆発音が響いた。
この光の正体を私たちは知っている。巨人が現れたのだ。
ズシンズシンと地響きが近づいてきて、時計塔の影から女型巨人が姿を現した。
「目標の巨人化を確認っ!!総員、女型の動きを止めろっ!!」
ハンジ分隊長の号令と共に、私達は一斉に飛びかかって行った。
私達の役目は、あらかじめ街のあちこちに設置された捕獲装置で上手く女型を捕獲し、うなじの中にいる人間を引きずり出す事だ。
だがそうは言っても、通常の巨人と比べて桁違いの身体能力を持つ女型の巨人には、攻撃はおろか近づくことすら容易ではなかった。
すでに数分が経過したが、女型はあちこちの建物を破壊し瓦礫を飛ばしながら兵士たちの接近を防いでいた。知性の無い巨人だったら、絶対にやらないような行動だ。
飛んできた瓦礫を避けきれず、破片の一つが私の頬を掠めていった。ビッと薄く切れた頬から血が滲む。
「おいっ、大丈夫かっ?!」
すぐ側にいたヒゲゴーグルさんが声をかけてくれる。私は頬の血を袖で拭って、
「かすり傷です!問題ありませんっ!」
と大声で返事をした。
このまま逃してなるものか。あいつはヘルゲとミアを、ペトラ達を…大勢の仲間を殺した。
(絶対に捕えてやる)
走る女型の背中を睨みつけながら、私は必死で後を追った。殺すのではなく、捕まえる。拘束して、知っている情報全てを話してもらうのだ。