第32章 裏切り者達
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次の日、作戦決行の日。
憲兵団の用意した馬車が古城に迎えに来て、エレンはストヘス区へと護送された。
その後エルヴィン団長のもとにも同様に憲兵団の馬車が迎えに来て、兵長も同じ馬車に乗り込んだ。兵長は足を怪我されているので、立体機動装置は装着せず私服のスーツを着ている。
そして私はもともとの所属であるハンジ班に戻り、女型捕獲作戦の最前線に配置されていた。巨大樹の森でも使用した捕獲装置を使用して女型の動きを封じるのだ。
作戦場に待機して少し経った。計画通りなら、すでにエレンは馬車を抜け出してアニと接触しているはずである。
「エレン、大丈夫かな…」
思わず呟いた言葉を、ケイジさんが拾ってくれる。
「心配か?ラウラはエレンの面倒を良く見ていたもんな。お前ら、まるで姉と弟みたいだからなぁ」
作戦行動中なので緊張は解かずに、それでもケイジさんはニカッと笑った。
「ま、アルミンとミカサが付いてるんだ。上手くやるだろう」
「そうですよね」
ミカサの、エレンに対する強烈な保護意識を思って、私もつられて笑ったのだった。