第32章 裏切り者達
そんな訳で私は、一人で団長のもとを訪れたのだった。部屋にはハンジ分隊長も呼ばれて、二人は私が持ってきた絵をまじまじと見つめた。
「ふむ…興味深い考えだ。ハンジ、君はどう思う?」
「うーん…確かに似てる、と思う。でもどうして女型は似ていて、エレンは似ていないんだろう?そこが分からない。リヴァイの言う通り、ラウラはアニの顔を見たことが無いから、このアニの似顔絵が正確かどうかも今の段階では分からないよね」
「そうだな…私もそう思う」
「アニの顔を見られればなぁ…」
「それは出来ない。作戦決行直前に、対象と接近するのはリスクが大きすぎる。少しでも気取られれば、作戦が破綻しかねない」
団長が首を横に振る。
「だよねぇ」
予想はしていたが、私とハンジさんはほぼ同時に肩を落とした。
「だが、この考えは一つの可能性として残しておいて良いかもしれない。もしも、中の人間が巨人の外見に影響を与えるのならば、逆に言えば巨人の姿から中身の人間を推測することも可能ということだからな。ラウラ、よく考えてくれた」
「い、いえ…ミカサが言っていた事を絵にしてみただけですから」
「誰しもが君のようなことができる訳じゃない。これは君だからこそできた発見だし、それを自分以外の人間に説明することができた」
表情を少し緩めたエルヴィン団長が歩いてきて、ポンと私の肩に手を置いた。
「君の考えを検証するためにも、何としても明日、女型の巨人を捕えよう」
「はいっ!」
私が大きく返事をして敬礼をすると、団長はこっくりと頷いたのだった。