第32章 裏切り者達
「つまりお前は、巨人の外見は、中にいる奴の容姿に影響されるんじゃねぇかと思った訳か」
「はい…ミカサが言っていた事が気になって。それで描いてみたら…やっぱり特徴が一致しているんじゃないかと感じて…」
「確かに、女型とアニ・レオンハートの顔は似ているように見えるな…。だがエレンの方は、正直似ているとは思えねぇ」
ズバリと言われた言葉に、確かにそうだと私も思った。エレンとエレン巨人は全然顔立ちが違うし、似ているところを探す方が難しい。共通点と言えばせいぜい髪の色が近いことくらいだが、それでは似ているとは到底言えない。
「それに、お前はアニ・レオンハートの顔を見たことがねぇんだろう?アルミン達から聞いただけじゃ、お前が無意識に女型に似せて描いちまってるって可能性も否定できない」
「仰る通りです…」
次々と言われる的確な意見に、ぐうの音も出ない。先ほどまであった自信は、今にも崩れ去ってしまいそうだ。
「やっぱりこの推論は間違っているのかもしれません」
シュンと肩を落とした私に、兵長は言葉を続けた。
「…いや、俺達だけで結論づけるのは早い。それに、面白れぇ考えだと俺は思う。お前、明日エルヴィンのところにこの絵を見せに行ってこい。明後日のストヘス区内の作戦前に言っておくんだ」
「は、はいっ!」