第32章 裏切り者達
アルミンとミカサが帰ると、私はすぐさま自室に引っ込み、一心不乱に鉛筆を走らせ始めた。もしかしたら、興味深いことが分かるかも知れないという期待を胸に抱いて。
それから数時間の間、私は絵に没頭していたらしい。ポンと肩に置かれた手の感触で、私は我に帰った。
「おい、飯の時間だぞ」
隣にリヴァイ兵長が立っていて、手にはランプを持っていた。窓に目を向けると、外はすっかり夕暮れ時になっていた。
「相変わらずだなお前は」
兵長が部屋に入ってきたことにも気がつかなかった私のことを、ちょっと呆れたように見下ろしている兵長は、チラリと視線をずらして私が描いていた絵を見つめた。
「で、この絵は何だ?」
それは数枚の似顔絵だった。エレンとエレン巨人、アニ・レオンハートの似顔絵と女型巨人の姿を描いたものだ。
夢中になって描いていたので、私も改めて自分の描いた絵をまじまじと見返した。
「やっぱり…」
「…だから何の話だ。分かるように説明しろ」
怪訝な表情を浮かべる兵長に、私は絵を見せながら自分の推測を説明した。