第31章 幸せ
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今回の壁外調査の結果を受けて、エルヴィン団長を含む兵団の責任者の王都招集と、エレンの身柄の引き渡しが決まったのだった…。
とは言え、壁外調査の報告書については通常通り作成しなくてはならない。そのため私達は壁内に戻ってきたその日から、身体を休める暇もなく報告書の作成に追われた。
私は他の兵士が書く報告書に加えて、絵の製作もあったので、睡眠時間もほとんど取れないほどだった。
そして、壁外調査の後に必ずやらなければいけない事がもう一つある。それは、殉職した兵士の遺族への報告だ。兵長や分隊長のような役職付きの兵士達が、主にその役割を担う。
壁内に戻ってきてから数日。特別作戦班の遺族達への報告に向かう兵長と共に私は歩いていた。
「…お前はついて来なくていいんだぞ。これは俺の仕事だ」
兵長が、横にいる私に言う。
「いえ、私も一緒に行かせてください。それで…これをご家族に渡しても良いでしょうか?」
そう言って私は、この数日間仕事の合間に仕上げた数点の絵を取り出してみせた。それはペトラ達の肖像画だった。古城生活が始まってから、コツコツと描いていたのだ。
せっかく縁があって同じ班になったのだし、何が喜んでもらえるような絵を渡したかったのだ。それが…まさかこんな形で渡す事になるなんて思いもしなかったけど…。
私が差し出した絵を見てリヴァイ兵長は、しばらくの間黙ったまま絵を見つめていた。