第31章 幸せ
「エレン止まるな!進め!!」
オルオがエレンの襟首をつかんで怒鳴る。さすがに調査兵団の精鋭である班員達は、すぐさま異常事態に気がついた。
仲間を一人失いながらも、止まることなく直ちにエレンの保護と迎撃体制に気持ちを切り替えた。異常事態において瞬時にこの様な動きが出来るからこそ、彼らはリヴァイに選ばれたのである。
後方で何かが爆発したような音がして、辺りは一瞬眩い光で包まれた。そして、その光の中から飛び出てきたのは…やはり女型の巨人だった。
「今度こそやります!!俺が奴を!!」
エレンは、巨人に変身するため自身の手に歯を立てようとした。グンタを失ったことで、感情はこれ以上ないほどに昂っている。
だが、班員達はそれを許さなかった。自分たちが請け負うからお前は逃げろと、エレンの背中を押し出したのだった。
初め、エレンはそれを拒んだ。自分も共に戦うのだと食い下がった。しかし、班員達の説得に、ついには仲間を信じる事を選んだのだった。
「我が班の勝利を信じてます!!ご武運を!!」
女型の巨人に背を向けて進み始めたエレンは、リヴァイ班の…仲間の強さを信じた。その気持ちに疑いは無かったはずだ。なのに…唐突に、先ほどのリヴァイの言葉を思い出したのだった。
「俺には分からない。結果は誰にも分からなかった」
ゾワリと胸が騒いで、エレンは思わず後ろを振り返った。
まさにエルドが巨人に噛みちぎられる瞬間だった。