第31章 幸せ
「全員戦闘開始!!女型の巨人を死守せよ!!」
団長の命令で、一斉に兵士達は巨人に飛びかかっていった。もちろん私も、スケッチブックを胸ポケットにしまうと枝から飛び降りた。
激しい混戦となった。斬っても斬っても終わりが見えない。こんなに巨人が密集している光景は初めて見た。
私は決して身体能力の高い兵士ではなかったけれど、それでも次々と巨人を討伐していくことができた。それは、彼らは何故か女型の巨人にしか興味を示さず、周囲を飛び回っている兵士達には目もくれないからだった。
巨人たちは皆、一目散に女型の巨人に群がっていった。巨人たちに貪り食われ、女型の身体はみるみるうちに小さくなっていく。このままでは、女型が食い尽くされてしまう…。
ブチンと、女型の腕や頭がもぎ取られるのが見えた。表面の肉はほとんどかじり取られて、肋骨が表出してきていた。
「…全員、一時退避!!」
団長の声が聞こえて、私達は木の枝に退避した。皆やりきれない表情で、食われていく女型の巨人の姿を見下ろしている。
調査兵団に討伐された巨人たちの死骸から上がる蒸気で、辺りには鼻を突くような匂いが充満していた。
すぐさま撤退のための準備が始まった。陣形を再展開するために、各々の兵士が素早く立ち働いている。私はリヴァイ兵長がガスと刃の補充を命じられるのが聞こえたので、急いでそれらを取りに走った。