第31章 幸せ
女型は、二人の攻撃を受けている間は終始無表情でどこか遠いところを見るような目をしていたのだが、頭の上に立ったリヴァイ兵長が何か話し始めると、徐々に表情が変わっていった。
何を話しているのだろうと思った時、突如女型の巨人は目を見開いて、耳をつんざくような悲鳴を上げ始めた。それは空気を震わせて、ビリビリと振動が伝わってくるほどの激しさで、耳を塞いでいないと鼓膜が破れてしまいそうなくらいだった。
だが、それはピタリと止んだ。唐突に訪れた静寂の中、ミケ分隊長の鼻が動いた。
「匂うぞ!…全方位から多数!同時に!」
ミケ分隊長が叫ぶと同時に、ドドドドと地鳴りのような音が聞こえてきた。
「エルヴィン!先に東から来る!すぐそこだ!」
木の陰から一斉に、三体の巨人が飛び出してきた。荷馬車護衛班が迎撃に向かったが、信じられないことに巨人たちは全員、兵士を無視して素通りした。
「え…?」
呆気に取られている内に、現れた巨人の内二体はリヴァイ兵長によって瞬殺されたが、3m級の小さい奴だけはその攻撃をかいくぐって女型巨人の身体にかじりついた。
(え…!?女型に攻撃を?エレン巨人と同じように、この巨人もまた捕食対象として認識されるの?)
食いちぎられる肉を見て、私はその異様さに血の気が引く思いがした。巨人が巨人を食っている…。