第31章 幸せ
前を飛ぶ兵長になんとか追い付くと、兵長はチラリと私の顔を見た。
「これから行く先にさっきのヤツがいるだろう。分かっていると思うが、お前は状況の記録に全力であたれ」
「はいっ」
先ほどの女のような巨人がいるのかと思うと、まるで地下への階段を一つ一つ降りていくかのように意識が暗くなっていった。これは…多分集中力のスイッチが入っていくサインだ。だけど、大丈夫。こういう非常事態の時には我を忘れて絵に没頭することはない。すごく良い状態だ。
私達がエルヴィン団長の立つ枝へと降り立つと、団長は厳しい表情のままだったが声をかけてくれた。
「よくこのポイントまで誘導してくれた」
その言葉で、やっと私は今回の壁外調査の目的を理解したのだった。私達の前を走っていた大量の荷馬車に、何が積まれていたのかも。
兵站拠点を設けるためではない行って帰ってくるだけの今回の調査で、なぜあれほど大量の荷物を持ち出す必要があるのか、最初から違和感があったのだ。
でもようやく理解した。今回の壁外調査は、この巨人を捕獲するために行われたものだったのだ。