第31章 幸せ
「いいか?そもそもなぁ…アガッ!」
講釈を垂れようとして例によって舌を噛んだオルオを見て、ペトラが大きくため息をつく。
後方を走るエルドさんとグンタさんも、やれやれといった様子で首を振っていたが、オルオのおかげで班の中の緊張が少しほぐれたのは確かだった。
オルオは自分では絶対に認めないだろうが、班のムードメーカー的な存在であることは間違いない。とにかく見ていて飽きないし、行動の一つ一つが可愛いのだ。こんな事を言ったら、ペトラは「げっ」とか言うかもしれないけど。
皆の表情を見回して、少しだけ普段の雰囲気を取り戻せたと感じた私は、自分自身もまた、少し肩の力が抜けたのだった。
〇
当初は順調に進んでいたように思えた行程だったが、右翼索敵が壊滅的打撃と伝達を受けてからはあっという間に状況が一変した。奇行種発見の黒い煙弾を見て、嫌な胸騒ぎがした。
明らかに…右から何かが近づいてきている。それが何か分かるまでは、周囲を見通せる場所にいた方がいいはずなのに…エルヴィン団長の打った緑色の信煙弾に従って進路を変えた私達は、巨大樹の森へと突入した。