第31章 幸せ
エレンのやや斜め後ろを走る私は、チラリとエレンの様子を伺った。馬の手綱を握る手には普段よりも力が込められているように見え、表情も硬い。
きっと緊張しているのだろう。それも当然のことだと思う。何しろ今回が初めての壁外任務であり、働き次第で今後の自身の生死が左右されるという状況だ。
たった15歳の少年がこれほどのプレッシャーを背負わされて、平然としていられる訳がないのだ。
「エレン、大丈夫?」
声をかけると、エレンは僅かにこちらに顔を向けてコクリと小さく頷いたが、その顔は引きつっていて、とても大丈夫そうには見えない。
でも、だからと言ってどうしてやることもできなくて、それがどうしようもなくもどかしかった。
せめて少しでもエレンの気持ちをほぐしてやりたいと思って、ニコリと笑いかけてやると、エレンも小さく笑い返してきた。
「おいエレン!お前、ヘラヘラしてヘマすんじゃねぇぞ!!」
エレンの隣を走っていたオルオが、ちょっと眉をひそめて言ってくる。意地が悪いように聞こえてしまうが、実はただ照れ隠しでやっているだけであることはお見通しだ。
オルオはリヴァイ兵長への尊敬をこじらせすぎて面倒くさい部分もあるけれど、根はとても優しくて面倒見の良い人なのだ。今だって、エレンのことを心配しているから声をかけてきたのだろう。