第31章 幸せ
それから少しして、予定していた通り第57回壁外調査が行われた。
巨人化実証実験の後、リヴァイ班の面々とエレンの距離は一つ壁を乗り越えたように縮まったのだった。
エレンの巨人化能力を恐れて彼の行動の一つ一つを警戒してしまっていた彼らだったが、あの一件でエレンに敵意が無いことが証明されて、それからは必要以上に恐れることがなくなったのだ。
そしてエレンの方も仲間達のそんな心境の変化を感じ取っているようで、以前よりも表情の硬さが取れて、打ち解けた様子が見られるようになってきたのだった。
本日も雲一つない見事な晴天が広がり、絶好の日和と言えた。
思えばここ最近の壁外調査で天気が悪かったことなんて無いかもしれない。やっぱりエルヴィン団長は晴れ男なんじゃないかな、と青く晴れ渡った空を見て私は思うのだった。
見渡す限りの平原に、私達の馬の駆ける音だけが響く。つい先ほど、団長の号令により長距離索敵陣形が展開され隊は広範囲に散らばったため、近くに他の兵士たちの姿はない。