第5章 幼馴染
昔の思い出から意識を引き戻した私は、ふと、あることが気になった。
「ねぇ、ライデンは…超大型巨人の襲撃の時はまだ訓練所にいたんだよね?」
「そうだな」
「おじさんとおばさんは…?無事でいるの?」
聞くのが怖かった。だけど、あの襲撃以来ずっと気になっていたことだったから、聞かずにはいられなかった。あの大混乱の後では、行方を探すことすらできなかったのだ。
「親父は…亡くなった。おふくろは、足を怪我したけど今は元気でやってるよ」
「そう…」
私は、心にずっしりと重い石を乗せられたみたいな気持ちになった。
ライデンのお父さんが亡くなったなんて…。
おじさんは、笑うとライデンとそっくりで、なんだか大きなヤンチャ坊主みたいな人だった。
家に遊びに行くといつも何か手作りのおもちゃを作ってくれた。家具職人だったおじさんは、手先が本当に器用で、ちょいちょいっとミニチュアの家具を作ってくれたりしたものだった。
私はその魔法のような手が作り出す可愛らしい家具たちを、少しずつ少しずつ集めて、出窓に並べては、自分だけの小さな部屋を作るのが大好きだった。
「お前の方は…?おじさん、おばさん、リベルトくんとエリクは無事だったのか?」
「ううん、兄さん以外は襲撃の時に…。兄さんは開拓地で死んじゃった…」
そう口にした途端、両目から涙が溢れ出てしまった。こんなにいきなり涙って出るんだ、と驚く程に勢いよく。
「そうか…辛かったな……お前が無事でいてくれて、本当に良かったよ」
ポンポンと頭を軽く撫でられた後、ライデンは両腕で私を抱きしめてくれた。
もう昔みたいに顔が目の前に来ることは無くて、彼の鍛えられた胸にバフンと顔をうずめるような格好になってしまった。
「ありがとうライデン…私も、ライデンが無事でいてくれて嬉しい」
涙はとめどなく溢れてくるけれど、ライデンのがっしりとした腕の中に包まれていると、父さんや兄さんの温もりが思い出されてくるようだった。
何もかも失ってしまったと思っていたけれど、私にはまだこの友人がいた。家族も同然の、誇り高くて優しい友人が。