第5章 幼馴染
彼が出発する日の朝、彼の家の前で壮行会をしたのを、今でもはっきりと覚えている。
「頑張ってね。たまには顔見せてよ?」
私は、餞別のプレゼントとしてハンカチを用意していた。裁縫はそんなに得意じゃなかったけど、彼のイニシャルを頑張って刺繍した。
それを渡した時、ライデンはあの太陽のような笑顔を浮かべて、
「あぁ。俺、家族のことも、お前のことも守れるような、立派な兵士になってみせるから!」
そう言って、ハンカチを差し出した私の手を彼はぎゅうっと両手で握ってくれた。
「うん!ライデンならきっとできるよ!身体に気をつけて!」
私もにっこりと笑って、私の手を握るライデンの手ごとブンブンと上下に振った。
なんて勇敢なんだろう。幼馴染として本当に誇らしく思う。
「お、おぅ…」
なぜだか、返事をしたライデンの声はさっきと比べると、まるでしぼんだ袋みたいに小さくなっていた。横に立っていたライデンのご両親が、ニヤニヤして彼のことを見つめている。
なんだろう?やっぱりちょっと不安になっちゃったのかな?でも、それも当然だと思う。だってまだ12歳なのに、人類のために命を捧げる覚悟をしに行くんだから。
何となく顔をヒクつかせながら去っていくライデンに手を振りながら、私は誇り高い幼馴染の前途に幸があらんことを心から願ったのだった。
今はまだ不安かもしれないけど、ライデンならきっと大丈夫だよ!頑張れ!