第30章 ささやかな代償
その夜、ラウラの自室にリヴァイがやってきた。古城にやって来てからすでに数週間が経っているので、今では各人に個室があてがわれている。
「兵長?!」
すでに眠ろうとしていたラウラは突然のリヴァイの来訪に、ベッドの上でキョトンと眼を丸くした。
「寝る前にもう一度消毒をする」
「え」
見れば、リヴァイの小脇には救急箱が抱えられていた。
「さっさと手を出せ」
ズカズカと歩いてきて、どかっ、とベッドに腰を下ろしたリヴァイは、やや強引にラウラの右手を取った。だが乱暴そうに見えて、実は驚くほど優しく触れられたので痛みはない。
がっちりとつかまれた手首を見て、こうなってしまってはもうおとなしく言うことを聞くほか無いと観念して、ラウラは右手を差し出した。