第30章 ささやかな代償
私はジワリと目頭が熱くなってくるのを感じて、気づいた時には両目からボタボタと涙を落としていた。
(私達のこんな視線を一身に浴びせられたエレンのショックは、どれほどのものだったろう…)
そう思ったら、鋭利な刃物で刺されたように胸が傷んで、涙が更にとめどなく溢れてきた。
声も上げずに泣いていた私に、最初のうちは誰も気がつかなかった。だけど垂れてきた鼻水をすすり上げた時、ついにペトラに気付かれてしまった。
「ラウラ、どうしたの?!」
驚いた顔をして覗き込んでくるペトラに、私は返事をすることができなかった。今声を出したら、みっともなく嗚咽を漏らしてしまうと思ったから。だからその代わりに、スケッチブックを差し出す。
「どうした?」
私の様子がおかしいことに気がついたエルドさん達も集まってきて、ペトラに渡したスケッチブックを皆が覗き込んだ。
そして先ほどの私と同じように、皆も言葉を失ったのだった。