第30章 ささやかな代償
ドオンッという爆音と共に地面が揺れ、森の奥で作業をしていたハンジ達は一斉に手を止めた。エレンを休憩させる間、こちらの作業を再開させていたのだ。
作業内容は、さらに改良の加えられた巨人捕獲罠の実装確認だ。ほとんどの兵士たちには知らされていないが、次の壁外調査において初めて使用する予定なのだ。おそらく、次回の作戦の中で最も重要な役割を担うものになるだろう。
「分隊長!」
駆け寄ってきたモブリットに頷いてみせてから、ハンジは音のした方角へと先陣を切って走り始めた。
木立の間から時折見える、硝煙のような濃い煙。あちらの方角にはエレンたちが休憩しているだけで、爆発を起こさせるようなものは何も置いていなかったはずだ、とハンジは走りながら考えを巡らせた。
かくして森を抜けたハンジは、青ざめた兵士たちにぐるりと取り囲まれているエレンと、右腕だけを生やした、いびつな巨人の姿を見つけたのだった。
皆一様に恐怖におののいた表情を浮かべていたが、その中でたった一人だけ全く違う表情を浮かべている者がいた。
巨人の腕を食い入るように見つめているラウラの顔には、うっすらと笑みが浮かんでいたのだった。