第30章 ささやかな代償
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次の日から壁外調査に向けての訓練が始まったが、旧調査兵団本部にいる私達は訓練の集合場所まで行くのが少し大変だった。
壁外での任務を円滑に進められるよう、訓練内容は多岐にわたる。そうして本日は、市街地からはずいぶんと離れた平原において、陣形の確認訓練が行われた。
私の本来の所属はハンジ班だが、次回の壁外調査ではリヴァイ班の所属となるため、陣形訓練もそちらで参加する。
訓練中、私はチラチラとエレンの様子を伺っていた。それは「エレンの様子を観察しろ」というエルヴィン団長からの指示もあるが、単純にエレンの事が気になるからだった。
エレンのことは、いつだってふと気になってしまう。怪我をしていればすぐさま手当てをしてやるし、兵長の完璧主義すぎる掃除指導で疲れた顔をしていればこっそりとお菓子を与えてしまう。
弟に似ているからなのか、とにかく何かと世話を焼いてしまうのだった。