第30章 ささやかな代償
「そうなんだね。そうだ!良かったら今度の調整日に古城に遊びに来たら?」
「いいんですかっ?!」
突然、黒髪の子がくわっと迫って来たので、その勢いに私はちょっと驚いてしまった。
「い、いいよ。エレンもきっと喜ぶよ」
そう言うと、二人はまだ幼さの残る顔いっぱいに笑顔を浮かべた。
二人の名前は、黒髪の子がミカサ、金髪の子がアルミンという。自己紹介をしてもらってやっと、アルミンが男性だという確証を持った私だった。
…あまりに失礼なので本人には絶対に言わないが、華奢な体格だし何より金髪碧眼の美形なので、女の子と言っても十分通ると思っていたのだ。
「私はラウラ・ローザモンド。よろしくね」
今さらながら私も名乗ると、今度はアルミンの方がくわっと迫ってきた。
「も、もしかして、あの有名な画家兵士のラウラさんですか?!」
目の前にあるアルミンの顔は、まるでハンジ分隊長がはしゃいでいる時のようにほんのり赤みが差していた。大きな瞳がまるでビー玉みたいにキラキラと輝いている。
「い、いや~有名って言われると恥ずかしいんだけど…、絵は描いてるよ」
そんな曇りのない瞳で見つめられると、ちょっと…いやかなり照れ臭いな、と私は思った。