第30章 ささやかな代償
「お疲れ様です」
二人は廊下の端に並んでピシッと敬礼をしてくれたので、私も敬礼を返した。黒髪の子と目が合って、彼女は一瞬ためらうような顔をした後おずおずと話しかけてきた。
「あの…エレンは…いえ、エレン・イェーガーはどうしていますか?」
その表情があまりにも思いつめたものだったので、私はむしろこの子の方が心配になってしまった。
「大丈夫、エレンは元気にしてるよ。毎日古城の掃除をしたり訓練したり」
リヴァイ兵長に厳しく指導されながら古城内を走り回っているエレンの姿を思い浮かべながら言う。
「エレンと仲が良いんだね」
「私達は…家族です」
小さな声で彼女が言った。きょうだいということなのだろうか?と疑問符が浮かんだが、隣にいた金髪の子がすぐさま補足説明をしてくれた。
「僕たち、エレンと幼馴染みなんです」
なるほど家族も同然の親しさということか、と合点がいった。私と幼馴染のライデンのような関係なのだろう。