第29章 第104期調査兵団
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朝とは言ってもまだ明け方なので、他の皆は起きていないようだ。
ちなみに食事の準備は当番制で、私は昨日の夕飯に引き続き当番になっている。今朝はペトラも一緒だ。
調理場に行くには必ず食堂の前を通るのだが、締め切られた扉の向こうから、早朝に似つかわしくない興奮した声が聞こえて来た。
その声を聞いて私達は顔を見合せた。
「えっ?!もしかして…」
若干青ざめながら扉の間から中を覗いてみると、案の定そこには虚ろな表情をしたエレンと、目を血走らせたハンジ分隊長の姿があった。
「まさか本当に一晩中語られるとはね~…エレンも入団早々、洗礼を受けたみたいね」
ペトラが苦笑いする。
「そうだね…」
私も苦笑しながら、内心エレンに同情した。
そんな事を話していた時、食堂内から扉が勢いよく開かれる音が聞こえた。肩を上下させて息を切らして飛び込んできたのはモブリット副長だった。
副長は、ソニーとビーンが何者かによって殺されてしまったという報告のためにやって来たのだった。
明け方頃、彼らは何者かによって一瞬の内に殺されてしまったらしい。見張り兵の交代の時間を狙って僅かな時間での犯行だったという。
私たちはすぐさま装備を整えて、現場へと駆けつけた。古城に置いていく訳にはいかないので、もちろんエレンも伴って。