第26章 兵長のおまじない
改めて考えてみると、私はかなりの時間を兵長と一緒に過ごさせてもらっている。きっと兵団内で一番一緒に過ごす時間が長いのはペトラでもナナバさんでもなく、兵長だ。
私が調査兵団に入団してもうすぐ2年が経とうとしている。
それは兵長と過ごした期間とほぼ等しい。
最初は怖いと思っていた粗暴な言動は、実は誰よりも優しい性格を隠すための照れ隠しであり、冷徹に振舞っているようでいてまるで炎のように燃える熱い思いを持っている方だということを知った。
私は、兵長のことを心の底から尊敬している。兵長のことが大好きだ。迷惑ばかりかけてしまっているけれど、私で役に立てることだったら何だってやりたいと思っている。
ペトラが兵長に抱いている「好き」とは…、同じなのか違うのか自分でもまだよく分かっていない。
でも、今はそれでいいと思ってる。いや、もしかしたらこの先ずっとこのままでいいかもしれない…。
私は力の限り絵を描いて兵団に貢献する。兵長のことは大好きで尊敬している。それだけを、胸にしっかりと刻みつけておけば十分だ。
私の返答を聞いて兵長は、少し考えるような顔をされた。
「そうか…緊張するか。なら、いいおまじないをしてやろう」
そう言って兵長は、読んでいた本をパタンと閉じて立ち上がった。そうして、数歩離れたところにいた私のもとへと歩いてくる。