第25章 トロスト区襲撃想定訓練
「なんで、調査兵団に入ろうって思ったの?」
ラウラが首を傾げる。その拍子に髪がサラリと流れて、まるで上等な絹糸のようだ。
「…きっかけは、リヴァイ兵長なの」
僅かにラウラの目が見開かれる。「へぇー」と何気ない様子を装っているけれど、明らかに何か動揺している。
ラウラはポーカーフェイスなようでいて、結構顔に出るので分かりやすい。
でも、「何か」を考えていることは分かるけれど、「何を」思っているのかはさっぱり分からない。
ラウラの頭の中には常に色々な思いが巡っているみたいで、私には思いもつかないほどたくさんのことを考えているようだった。
複雑に入り組んだ思いを全て理解することはできない。だから結局は、ポーカーフェイスなのかもしれない。
「私達が訓練兵団を卒業する直前、今日みたいに全兵団参加の訓練があったの。その時に兵長の立体機動の姿を見て、あまりにも圧倒的な才能に、私とオルオは一瞬で魅了されてしまった。この人と同じ兵団で働きたいって思ったの」
ラウラは何も言わなかったけれど、うんうん、と頷いて聞いている。
「だから私達、入団してからは必死で訓練に打ち込んだわ。いつかリヴァイ班に指名してもらえることを夢見て、血反吐を吐くような訓練にも耐えた」
そうしてようやく兵長の近くに行けたというのに…ラウラは、それをあっという間に追い抜いていった。
いや…追い抜いて行ったんじゃない。私が兵長を追いかけたのと同じように、兵長がラウラを追いかけているんだ。……そもそもの前提がまるで違う。
そんな事を考えていたら、ムクムクと黒い感情が湧き上がってきて、隣で美しい微笑みを浮かべているラウラの事が、…どうしても良く思えなくなってきてしまった。
まずい、早くこの思考を断ち切ろう。そうしないと私…ラウラのことを嫌いになってしまうかもしれない……。