第25章 トロスト区襲撃想定訓練
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ラウラが色々な人から貰った食べ物を一緒に食べながら、私達は他愛もない話をして過ごした。
どんどん日が暮れていく中、広場には次々と松明が灯されてゆく。そのオレンジ色の炎に照らされたラウラの横顔は、まるで彫刻の様に整って見えた。
はにかんで笑う顔、ちょっと考え込む様な顔、突然ポカンと呆けた様になる顔。
ラウラの表情はコロコロと絶え間なく変わり、見ていて飽きなかった。そして、そのひとつひとつが美しかった。
私は先日の、壁外調査の夜にラウラのアトリエで目撃したことを考えた。
兵長の優しい微笑みが、頭からずっと離れないのだ。そしてその時に抱いてしまった、ラウラへの黒い感情もその度に沸き起こってくる。
本人を前にすると不思議と薄れるのだけれど、消えることはなかった。
「あのさ…ペトラ」
いつの間にかぼんやりとしてしまったらしい私の意識を引き戻したのは、遠慮がちに発せられたラウラの小さな声だった。
「オルオとペトラって、幼馴染なんだよね?」
「ん?そうよ?」
何を聞かれるのかと思ったら、意外な質問をされたので、私は首を傾げた。
「あの…さ、うーんと…えっと……。いや。うん。ところでオルオってさ、結構面倒見いいよね!」
何かを言いよどんでいるような様子で迷っていたラウラは、突然そう言った。ぐるぐると迷った挙句、当初の内容を諦めて、突然別の話題を振ったような感じだ。
「…?うん、まぁそうね。オルオはきょうだい多いから。アイツ、ああ見えて長男なのよ。下にいっぱい、小さな弟さんや妹さんがいて、たまに実家に帰ってもずっときょうだい達の面倒を見て休むヒマも無いくらい」
「へぇー!オルオってお兄さんだったんだね」
ラウラはニコニコと穏やかに微笑んだ。まるで花が咲いたように、柔らかい笑顔だった。