第25章 トロスト区襲撃想定訓練
ペトラの取ってきてくれた野戦糧食の包装紙を破いて、硬そうな中身をボリッとかじる。
…うん。美味くも不味くもない。でも、食感は結構好きだな。
ボリボリと食べ進めていると、ふいに頭上から声がした。
「おっ、ラウラ!もうメシ食ってんのか?早えーな!」
見上げるとそこにはハンネスさんが立っていた。
「ハンネスさん!お疲れ様です。先日は…見苦しいところをお見せしてしまって申し訳ありません。ご挨拶もしないまま…」
「がはは!なーに、俺は楽しかったぜ!また飲みに行こうな」
ポンと軽く私の頭を撫でてから、ハンネスさんは去っていった。去り際に小さなリンゴをこっそりくれて、「そこの子と一緒に食べな」と笑った。
ハンネスさんが行ってしまうと、また声をかけてくる人がいた。
「やあ、ラウラ。この間は色々と話せて楽しかったぞ」
「ラウラ、この間は司令と隊長の暴走を止めてやれなくてすまなかったな。あの後大丈夫だったかい?」
イアン班長とリコ班長だった。
二人もまた、先日の飲み会のことを少し話してから、「内緒だぞ」とお菓子をくれたのだった。
そして二人が去ると、また次の人が現れる。
「ラウラ、訓練で無理はしなかったかい?ハンジの暴走に困ったら、私に言うんだよ?」
「ラウラ~!お前、また今度飲みに連れてくからな~!ただし、今度はほどほどにな!」
ナナバさんとゲルガーさんだ。
二人はわしゃわしゃと私の頭を撫でて、どこで手に入れたのか、ふかした芋をくれた。
次から次へと声をかけられるので、私は野戦糧食を食べる暇も無く、傍らでポカンと驚いているペトラと話すこともできない。