第25章 トロスト区襲撃想定訓練
ピクシス司令を見送ってから、私たちは訓練のために臨時で設けられた宿舎へと戻った。
本日の訓練は終了したので、後は各々明日の訓練に備えて身体を休める時間だ。
「俺はエルヴィンに用がある。お前はさっさと休め」
「はい、お疲れ様でした」
そう言って敬礼をすると、兵長はスタスタと歩いて行ってしまった。
はい、って思わず言ってしまったけど、夜食対決を見に行くくらい良いよね…。うん、多分大丈夫だ!明日の訓練に支障さえ出なければいいんだから。
兵長に対して少し罪悪感があったけど、私はくるりときびすを返した。
さて、まだまだ夜食勝負までには時間がある。それまでの間、何をして過ごそうか。ハンジ分隊長から依頼されている絵でも描いていようか。
そんな事を考えながらブラブラと歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「ラウラ!」
「ペトラ!そっちももう自由時間?」
「うん!もうヘトヘトだよ~。ちょっと早いけどさ、ご飯食べちゃわない?私受け取ってくるよ!」
普段の食事と違って、こういう訓練の時は実戦を想定して野戦糧食を食べることになっている。
硬いクラッカーみたいな食べ物で、別に美味しくもないし不味くもない。意外と歯ごたえがあるのは、よく噛むことで満腹感を満たす狙いがあるのかもしれない。
「ありがと!じゃあ私は、飲み物用意しとく」
「ん。じゃあまた後で」
私たちは各々に配給所に行って食事を取ってくると、夜食対決の会場になっている大広場の一角で落ち合った。
このまましばらく、ここでおしゃべりをするのもいい。そう言えば、こうやってゆっくりとペトラと話すのなんか久しぶりな気がする。
結構頻繁にアトリエに遊びに来てくれているけど、絵を描いている時の私は上の空の時もあるし、廊下で会った時はお互いに用事があるから、簡単な挨拶程度しかできない。