第25章 トロスト区襲撃想定訓練
想定訓練運営のための臨時運営本部の前を通りかかると、中から丁度ピクシス司令が出てくるところだった。
「ピクシス司令!」
私が慌てて敬礼をすると、司令は私の姿に気がついてニコニコと笑いながらこちらに向かって歩いてきた。
「ラウラではないか。また酒でもどうかのう?」
「いえ…明日も訓練ですので遠慮させていただきます…。先日はお見苦しいところを晒してしまい、申し訳ありませんでした」
「なに、あんなのは序の口じゃよ。ワシなんかもっとスゴイことに…」
「おいジイさん、ラウラに余計な事を教えるんじゃねぇ」
リヴァイ兵長がジロリとピクシス司令を睨む。
兵長は上下関係を気にしない…。いや、多分ある程度は考えているけれど、だからといって敬語を使ったり畏縮したりといったことがないので、時々聞いているこちらがびっくりするような発言をすることがある。
今のもそうだ。司令に対して「ジイさん」だなんて。私だったら、とてもそんな事言えない。
でも、不思議と嫌な感じはしない。それがリヴァイ兵長らしさなんだよな、なんて思ってしまうくらいだ。
「こりゃ悪かったのう、リヴァイ」
ピクシス司令はニヤニヤといたずらっぽい笑みを浮かべながら、口ひげを撫でたのだった。