第23章 成果
ラウラにとって巨人とは、家族を殺した憎しみの対象だ。
だがそれと同時に、芸術家である彼女にとって最高に創作意欲を掻き立てられる素材でもあり、巨人に向ける感情というのは一言では言い表せない複雑なものになっていた。
憎悪の感情が高じたがゆえに、一周回って強い執着の対象になってしまったのかもしれない。
なので傍目には、ラウラがまるで巨人好きのように見えてしまうこともあるのだった。
しかしそれはあくまでも「巨人の絵を描く」という目的達成のためであり、巨人への興味を持つ理由はこれ以外には無い。この辺りは、ハンジと似通っている。
あくまで、自分の目標達成のための道具としてしか認識していないのだ。
もちろんラウラだって、巨人に恐怖を感じない訳ではない。むしろ、目の前で父親を食われているのだから、巨人に対する恐れは人一倍である。
だが創作意欲に火がついてしまうと、憎しみだとか悲しみだとかの感情はまた別のところに置き去りになってしまって、例の異常な集中力でもって巨人の観察にのめり込んでしまうのだった。
そしてそういう時は大抵、ゾッとするような怪しい笑みを浮かべている。