第22章 息抜き
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兵団施設に戻って兵長と別れた後、私はこっそり調理場へと向かった。
人前で食事をしないのなら、お部屋に戻ってから食べられるように何か持っていこうと思ったからだ。
「サンドイッチとかで大丈夫かな…?」
調理当番の兵士に事情を説明したところ色々な食材を提供してもらえたため、急ごしらえながらも中々立派なものができあがった。
すでに兵士たちは各々の居室に戻って就寝の準備をしているような時刻だったから、宿舎の廊下はシンと静まり返っていて、ポツポツと配置されたロウソクの灯りが私の歩く動作に合わせて微かに揺れていた。
兵長の部屋の扉を、コンコンと控えめにノックする。
ガタン、と椅子を引く音が中から聞こえたので、不在ではなかったことにひとまず安堵した。
「どうした」
扉の向こうから顔を出した兵長は、暗い廊下に立っている私を見て僅かに目を見開く。三白眼気味なので、ちょっと凄みがあって怖い。
「あ、あの、兵長…お部屋で召し上がれるようにサンドイッチを持ってきたのですが…よろしければ…」
そう言って私は、皿を乗せた盆を恐る恐る兵長に差し出したのだった。
実家にいた頃から料理は作っていたから、そんなに変な味はしないと思うけど…という不安を感じながら。
「…お前が作ったのか?」
「は、はい」
「そうか…すまないな。入れ」
兵長に促されて入ったその部屋は、それほど広くはなく必要最低限のものだけが置かれたシンプルなものだった。
一目見ただけで、掃除が行き届いているのがよく分かる。